大学に通い資格を取り、採用試験と面接を受けて合格し採用されると「先生」になることができます。今でも不思議に思います。私自身の想いや性格も知らないくせに、一人の先生として世の中に認められる立場を貰えることになるのです。紙切れの問題がある程度できて、実技(体育)があり面接官がいる会場で個人面接や集団面接が試験だったと思います。面接の時など、面接官を見てこの人達が自分の人生を決める権利などあるはずがないと思ったものでした。当たり前の話ですが、結婚して親になる時も、決して親になっても良いと認められたわけではありません。「あなたは子どもを育てる人間性が身に付きましたので、親になる資格を与えます。」というわけではないのです。先生という立場にいること。人の親ということ。クラブチームを運営(赤字経営で持ち出しですが)していること。誰からも人間性を認められて行っているものではないからこそ、何時も「これでよいのか。」と自戒したり、若手を含め多くの意見を聞いたりしながら、多くの方に支えられ何とか生きているところです。 セレクションの時期になりました。いろいろなチームを受ける選手たちは不安なことと思います。でも、3月の末には自分自身に縁のある次の場所が必ず決まっているから、あまり考えすぎたり緊張しすぎたりすることなくいろいろなチームのセレクションで力を発揮して下さい。保護者の方には、不安に感じている選手以上に想いをめぐらせたり、張り切ってしまったりする人が少ないことを祈るばかりです。アドバイスをさせていただくと、今の気持ちは、「できるだけ名前があったり結果の出ているチームに入ることが一番の目的になってはいませんか?」「そのチームに入ることが息子さんの幸せであるかのように勘違いをしていませんか?」私たちのチーム(ヴィヴァイオ船橋)を含めて、たいしたチームがあるわけではないという現状をお知らせしておきます。このチームに入れば息子さんが幸せになれるチームなどないということを、つたない経験とこれまで見てきたジュニアユース年代のクラブチームの現状からお伝えしておきます。大切なことは、3年間サッカーを通していろいろなことを学び人間として成長すること、高校年代でもスポーツを愛し続けているような基礎をつくることだと思っています。選手たちは、結果に一喜一憂することでしょう。せめて保護者の方々は、どこに入れるかということではないということを心にとめて、この期間あたたかい目で息子さんを見守ってあげてください。どのチームにも入っても辞めてしまう選手がいます。でも辞めたから駄目なわけでもなく、3~5年という中期的な観点から息子を支えてあげてほしいと願っています。 ちょうど1年前、市内の大会を見学に行った時、ある保護者の方から声をかけられました。「ヴィヴァイオって何なの?評判悪いけど。ヴィヴァイオに入っていないと中学校のトレセンに入れないの?」………絶句。 初対面の人に対してもう少しものの言い様があっても良いのではと思いつつ、「ヴィヴァイオではなくてもトレセンには入れますよ。」というお答えをしました。「評判悪いよ。」というこの人はいったいどこの誰で、うちのチームの何を知って、何に対して言っているのだろうか。ちょっとだけ身体にアドレナリンが分泌されそうになりましたが、知らない人に限っていろいろな噂をたて、誹謗中傷することにも慣れはじめていた時期だったので、その件については詳しくお尋ねしませんでした。その方が離れて行かれた時、「評判の悪いチーム」に近い将来息子さんが希望を持たなければ良いのにと思ったものでした。 子ども達のことを考えている方がいたら声をかけ知り合いになります。学生であろうとお父さんコーチであろうと年齢や役職等には全く関係ありません。私たちは長いものに巻かれたり、人を見たりする生き方をしていませんし、これからもするつもりはありません。繰り返しますが、私自身も誰に許可をもらって2人の子どもの親になったわけでなく、クラブに携わることでより多くの子ども達の人生に携わる責任から、自戒しながら成長していかねばならないと思っています。それぞれの立場で今回の題でもある「子どもは親を選べないからこそ」という言葉を考えていただけたらと思います。 (渡辺)