不本意ではあるがセレクションをさせて頂いている。チーム立ち上げの年、スクール生以外で参加してくれたのは10名にも満たない選手たちだった。船橋市内全チームにハガキを出しての結果。12年目を迎える23年度のセレクションには、140名を超える参加があった。立ち上げから数年は、苦しい時期もあった。3年目だっただろうか、山手のグランドで行っていた頃の話になる。ずば抜けて力のある選手が足を運んでくれた。セレクション終了後に「一緒にやらないか」と声を掛けさせてもらった。「僕は○○○○に行くことが決まっています」と、小学6年生に言われた。力試しをさせに来る親がいるのだと悲しくなった。何時のことだったか、初回のセレクションで私共のクラブに来ますと話をいただいていたので1枠空けていた。2カ月して連絡を取ると、「県外の街クラブに決まっていますが」とのお話だった。相手のあることだが驚いた。慌てて1枠に入る選手を探す経験をした。 10年以上もセレクション時に面接を続けていると、選手が口にする言葉の変化に驚く。私共を受けに来てくれる選手たちは、J下部以外にも2~3チームのセレクションを受けていることが多い。。立ち上げから数年は、必ず2つのチーム名を耳にし、私共のチームのウエイトは決して高くなかった。当時は、「よく検討して欲しい。是非私達のチームで一緒にやろう。」という声をかけていたが、J下部が駄目だった場合でも私共のチームを選んでくれるかどうか全く分からなかった。5年ほど前から耳にするチーム名が変わってきた。複数出ていた1チームの名前を1回も聞くことなく面接が終了し、今まで聞くことの無かったチーム名が上がるようになった。選手と話していても、少し選んでいただけそうな雰囲気を感じることができた。大きな変化だった。3年ほど前からは、もう1チームの名前もほとんど聞くことが無くなった。逆に県内外を含め、いろいろなチーム名を耳にするようになる。ここでは3割しか書けないとお伝えしている。私が感じたこの10年の変化を、文字で分かりやすく伝えることはできないが、何となく雰囲気が伝わるだろうか。この10年で2,000回を超える面接をしてきた。選手の口から発せられる言葉や表情、何となく伝わってくる温度みたいなものを私はアンテナを出して受け取っている。セレクションは、ただ良い選手と出会う為のものではない。「残念ながら」という葉書を受け取る選手の方が多いのだ。私共のチームが、私共の都合で行うセレクションに心が無ければ、選ばれなくなるのも一瞬だと常に思っている。 私共のチームに入りたいと強く感じる選手がいる。本当に有難い。人数制限を無くし誰でも入れるクラブにできれば、心えぐられることもないのだが、それは難しい。選ばれる側から見れば、私がこの場でこのような心情の一部を吐露しなければ、遠距離のままで終わることだろう。選ぶ側に心があれば、それは苦しいものだ。私共は街クラブ、Jのように良い選手に声をかけて自由自在に選手を招集し、見比べることなどできない。この時期だけは、心を捨てたいといつも思うものだ。「何人取るのですか」という質問もある。決めていたが1~2人増えることもある。心があるからだ。自分の子どもだけを見ていれば、相手の苦悩など感じることはないだろう。 合格を出しても8割以上はJ下部待ちになる。12年もそのような状態が続き、これからも変わることはない。「すみません」と言われるが、慣れたものだ。「相手のあること」、Jを第1優先にしたいという気持ちを尊重できなければ私達街クラブは厳しいのだ。Jが駄目だった場合、街クラブをいくつか考えているという話をいただくことも、まれにある。その気持ちも尊重したいが、合格者ではない継続者のグループの中にも沢山の可能性のある選手たちがいる。「相手のあること」、ある一定の基準を設けなければ、待っている選手たちを更に待たせることになる。 第1回目のセレクションを終えて9日後、船橋市内である人と出会ってこのようなことを言われた。「今年は100人取るんですって」「VIVAIO以外どこも受けてはいけないんですって」そのように聞きましたけど。絶句。私共は、常にいろいろなことを言われる立場にある。耳にする話は、全て現実からかけ離れた話。「月の会費が8万円」「海外遠征に50万円かかる」等、嘘でももう少し現実に近い話でお願いしたいと感じることが多い。「月の会費は他クラブと変わらない」逆にパス6台を保有して移動するため現地集合が少なく、交通費を考えれば他クラブより安い設定をしている。海外遠征など行ったことが無い。私共のクラブで3年間にかかる遠征合宿費の合計は、海外遠征(アジアは除く)1回よりも安い。「相手のあること」、私共はいろいろなことを考えて真剣に生きてきているつもり。11年赤字でもクラブがあるのは、1~3月に安い給料でさえ払えない状況でもついてきてくれるスタッフがいるから。私共に対しての噂話は、だいたい的外れが多いものだ。 スタンスを変えると、信頼を失うことになる。当たり前のことだ。ホームページで皆さんに訴えていることを平気で変えるチームが出ている。このセレクションの時期に、公言していることを1日にして変えてしまうチームが出ていることに私自身大変ショックを受けている。良い選手を取りたいがために、ホームページでうたっていることを平気で変えてしまうのは如何なものか。この世界は、気が付く保護者が少ないから成り立っている部分が多々ある。ジュニア年代では結果に群がる保護者がいることも事実なのだ。でもジュニアユース年代は違うと思う。その理由は、ここでは書かない。ジュニアとジュニアユースは全く別物だと私はこの10年で感じている。ホームページに良いことをたくさん書いているチームがある。想像と現実のギャップは、大変大きなリスクになる。もう1度書こう。簡単にスタンスを変えるようなチームは、保護者の目がしっかりするようになれば選ばれるチームではなくなるのだ。自分たちのことをまず考えるのではなく、ホームページに書かれている内容を信じて集まった選手たちの気持ちを考えるべきではないのか?スタンスは変えるべきではない。自分たちの都合でホームページを書き換えることは一瞬だろうが、失われた信頼を取り戻すには何年もかかる。そんなことも分からず子供たちを指導できるのか?本当に残念だ。残念という意味を理解できるのかなぁー。「信じて受けにきた相手があるのに」。 この3年間の成長は、重要なのだとお伝えしている。私達は毎年、3~4回のセレクションで130人以上の選手たちに「残念ながら」という通知を送っている。「上手くなりたい」と、強く希望する選手達の受け皿となることができない。1番の大きな理由は、「自由に使える場所」が無いからだ。その件についても、通信を通して私自身の心の動きをお伝えしてきている。クラブを維持していくのに重要な要素は4つある。そのうちの1つが場所なのだ。場所さえあれば、チームで受け入れることができなくても違った形で「個」の力量を上げることができる場を提供できる。 私達は新たな取り組みに挑戦する。私や佐々木の悲願である。もうすぐ43歳になる。50歳を超えて生きていたら、同じベクトルで進む全国多くの仲間たちと笑っていたい。相手があるからこそ。 (渡辺)