6月19日、大阪にあるFC猿蹴の松本さんが船橋に来た。来たというよりも来ていただいた。チームを休みにしてできた時間(台風の影響)を、わざわざ私達の為にということで、ノーアポで車を走 らせて来て下さった。VIVAIOは、クラブを1週間OFFにしてコーチの研修期間にしていたことと、活動日ではない火曜日だった為、近隣の選手8名だけを急遽集めて特別スクールを行ってもらった。 何よりも考え方が半端ではないく、驚くというか打ちのめされた。一緒に見ている加納に、「これ愚息(中1)を夏休みに送って、トレーニングメニューを体得させ、VIVAIOに還元できないかなぁ~。」 と耳打ちをした。コーチを40日間送ることはできない。愚息であれば、騙してでも行かせてトレーニングメニューと何に拘らせているのかを知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。 現実的には、中学生1人を安宿に40日間宿泊させるのは難しと感じていた。母親を一緒に40日間付き添わせることも現実的には難しかった。自分で加納に耳打ちしたにもかかわらず、実際に は難しいと感じて断念することにした。6月22日、昼頃松本さんからメールが届き、読んだ私は「ほら、同じことを考えてくれていた!」と周囲をはばからず、大きな声を出した。「夏休み40日間、愚 息を預かれないかというものだった。ホームステイ先も用意しています。」との内容。27日に届いた夏休みの予定表を見て愕然とした。42日間、宿題を終わらせる1日を除いて休みが無い。休み が無いだけでなく、1日の練習時間が9:00~19:00までの10時間がほとんどの日程で組まれている。愚息には、予定表を見せることなく「松本さんが預かりたいと言ってくれているが、一生に1 回の事だから自分で決めなさい。」とだけ伝えた。数日後、「行ってみたい」と愚息が決断した。松本さんには、7月20日~8月31日までの日程を、8月27日までにしていただきたいとお願いした。 8月26日~29日まで奈良県の「聖地下北山」で一部の中1の合宿がある為、そこに愚息を参加させて仲間達が何かを掴んで欲しいと考えたからだった。 7月20日に飛行機で関空に飛び、レンタカーでお世話になる須田様のご自宅に挨拶をさせて頂いた。「本当に申し訳ありません。」という気持ちと「私も人の子を預かっている為、滅多な事でなけ れば、夏休み中大阪に伺えませんが宜しくお願いします。」とご挨拶をさせていただいた。それから39日後、奈良の下北山に愚息が合流した。短期(お世話になった方々にしてみれば長期ですが) の「留猿学」だったが、松本さん・高峯コーチ・須田様・大変お世話になった仲間である子猿達のおかげで、激変した姿で戻ってきた。愚息の「約40日有難うございました。」の言葉に、「4日も経て ば40日の意味が無くなる。現状維持がどれだけ大変なことか。松本さんが呼んでくれた恩返しをこれからどうしていくのか自分自身で決めなさい。自分が経験したことを仲間たちに還元しなさい。」 と言葉をかけた。1~2杯だった食事量は、6杯くらいになっていた。「食べなかったらやってられない」と仲間に言ったとのこと。その言葉は、ピッチでボールを触る姿をみれば簡単に理解できる。 私は今までの人生の中で1回だけ覚悟をしている。小学生の時教師になろうとしたことでも、結婚、出産、クラブの立ち上げ、安定した公務員を辞める時でもない。小さな会社を立ち上げる時、社 員とその家族を養っていくんだという覚悟をした。今回、愚息を40日間預かっていただき激変させていただいた。「VIVAIOの為に何かできないか。」という松本さんの言葉と、現実に激変した愚息 の姿を見て、今までの「中瀬古イズム」の柱を変えることなく人生2回目の「覚悟」をすることに決めた。基準の高さを感じる出会いが、奈良でもあり福岡でもあり、大阪でもある。このような素晴らし い出会いに心から感謝したい。40日間お世話になった須田様、愚息に本気の基準を感じさせていただいた松本さんと高峯コーチ、そして「留猿学」の期間を共に過ごしてくれた子猿達の皆さんに 心から感謝したい。このお礼は、私の覚悟でお返ししたいと思っている。 (渡辺)